昨年末で教室の業務がほぼ終了したので、「今月のご挨拶」と「DERIVE de ドライブ」で宿題にしてあった問題を少しずつ片付けていこうと思います。
「おじさん。
今年もよろしくお願いします」
「お、Kishitani君。
ちょうどいい。宿題となっている問題を列挙して欲しい」
「あたしは、ともちゃん。
て、言うか、なんで、命令されなくちゃならないのよ」
「ま、「ガリレオ」ごっこということでな。新年にあたって、頭のウォーミングアップをしようということじゃよ。
ともちゃんも、これまで、清少納言や水戸黄門のお銀さんをやったじゃろうが。
よ、芸達者!」
「なんか、すっごいソンしてる感じだけど。
今回だけですよ。Yukawa先生~。
わたしの考える宿題は、次節の表の通りです。
漠然とした問題や情報の更新も含んでますけど」
「ありがとう。
実に、興味深い」
No | タイトル | 最新情報 | 概要 | 主な宿題 |
---|---|---|---|---|
1 | 道中双六 | 「道中双六の問題(続)」 2014年2月の今月のご挨拶 |
1.駒は、振り出しから、必ず、1番目の宿場に進める。 2.駒は、各宿場で、確率Pで、次の宿場に進み、確率(1-P)で1つ戻る。 3.駒が最後の宿場から上がりに進んだときは、双六上から消える。 4.駒どおしの関係は、無い。 5.振り出し~1番目の宿場、各宿場間、最後の宿場~上がりまでの所要時間は、すべて1日と勘定する。 このとき、平均何日で上がれるか?(最短日数は、s+1日) ※宿場数s=1の時は2/p、s=2の時は、1+2/(p^2)であることは、分かった。 ※一般のsについて、上がりの確率を再帰的に定義してs=5程度までの近似計算は可能。 ※Excel表を使った数値計算では、特にp=1/2において、s=5では、最短日数6日の6倍、 s=53では、最短日数54日の約53.56倍となった。(青字部分を2015/2/9修正) |
差分近似して、偏微分方程式の問題としての検討。 ∂(f,t,1)≒(1-2p)∂(f,x,1)+(1/2)∂(f,x,2)、 ここで、tは時間、xは位置、f(x,t)を位置xにおける時刻tの時の確率とする。 p=1/2の平均日数は最短日数(s+1)日の2乗の予想の検証。 p=1/2は、2016/4の「道中双六の問題(続々)」で一応解決。2016/4追記 偏微分方程式近似でp=1/2の場合は、「道中双六の問題(補筆1)」で平均日数=(最短日数))^2を解決。2017/1追記 p<>1/2では、偏微分方程式の∂(∂(f,x),t)の項を省略できないことが分かりました。「道中双六の問題(補筆2)」 2018/6 追記 DERIVE de ドライブの第88回「マルコフ過程(1)(非対称型道中双六:宿場数=3~5)」(2018年4月)~第91回「マルコフ過程入門(非対称型道中双六:固有方程式の漸化式)」(2018年6月)で、宿場数の小さい場合は、解決。また、一般の場合について、平均日数計算公式を導く。第92回(2018年7月)の固有方程式の一般形で、漸化式によらない一般解を導く。 第93回(2019年8月)で、平均日数公式が対称式で表されることから、基本対称式に分解できることを示し、宿場数が大きい場合も原理的には、厳密解が求められることを説明した。2019/12 追記 |
2 | 閏年 | 「月と暦」 2013年8月の今月のご挨拶 |
1年は、365.24219・・日なので、端数がある。 そこで、西暦を4で割り切れる年を閏年、すなわち2月に1日を加算して29日の閏月とする。 一方、4で割り切れて、かつ、100で割り切れる年は、平年、さらに、400で割り切れる年は、閏年とする、というのが現行の方法。 すなわち、端数の0.24219・・≒1/4+a/100+b/400、と置いたとき、b=0とすると、a=-0.781となるので、整数とするためには、a=-1とする。 こうすると、b=0.876となるので、b=1と置いて、0.24219・・≒1/4-1/100+1/400、と近似していることになる。 この絶対誤差は、約0.00031となるので、これが1日となるのは、約3200年が必要。 |
現行の閏年の計算方法をExcelでシミュレートしたとき、累積誤差が1日を超えるように(見える)年が時々現れるのはなぜか? 今月のご挨拶「年の表記方法(和暦と歴史、六十干支、西暦の改暦)」(2018年3月)の「ユリウス暦からグレゴリオ暦」の中で、直接ではないが、現在のこよみの誤差について、触れた。 |
3 | 干支拳 | 「干支拳でお正月」 2013年1月の今月のご挨拶 |
三すくみが普通のじゃんけんの場合、自分に対するものを勘定してあいこの数は、1。このとき、可能なゲームの組み合わせの数は、2通り。 四すくみでは、あいこの数は、2のみで、6通り。 五すくみでは、あいこの数は、1または3で、計48通り。 六すくみ(球磨拳)では、あいこの数は、2または4で、計730通り。 なお、六すくみ以上では、サブネットが発生する場合がある。サブネットとは、あいこの数が4の場合に3すくみ+3すくみのようなものをいう。 七すくみでは、あいこの数は、1または3または5で、計31680通り。 なお、理論的には六すくみまで解明できた。七すくみは、数値計算のみの結果。 八すくみ以上(干支拳は十二すくみ)は、数値計算もできていない。 ※七すくみまでから単純に外挿すると干支拳では、計10の18乗程度に達する。 |
数値計算のアルゴリズムを再検討して、速度を上げることで八すくみ以上の場合を計算。 近似的でもよいが、一般の場合を理論的に計算。 |
4 | 地デジ | 「東京スカイツリー」 2011年2月の今月のご挨拶 |
Q1.「地上」でない「デジタル放送」ってあるの? Q2.「衛星放送」には、「アナログ放送」があるの? Q3.そもそも、「アナログ放送」と「デジタル放送」は何が違うの? Q4.「地デジ」の電波の長さは、アナログ放送より短くなったの? Q5.「地デジ」の電波の強さは、強くなる?、それとも、弱くなる? Q6.東京地方以外の地方にある電波塔は改修するの? Q7.東京タワーは、スカイツリーができたら、壊しちゃうの? Q8.いったい、何時から、アナログ放送がなくなるの? |
|
5 | クヌースの矢印表記(記号) | 「1・2・3・・無限大」 2011年1月の今月のご挨拶 |
クヌースの矢印記号の2本の場合、↑↑は、たとえば、2↑↑n であれば、2の『超べき乗』で、2自身も含めて、2がn段重なったもの。 x↑m=x^mとして、x↑m n=x↑m-1 (x↑m n-1)と再帰的に定義。 ここで、nは、1以上の整数。 数値的には、2↑↑2=4、2↑↑3=16、2↑↑4=65536、などと急激に拡大。 2↑↑↑2=4、2↑↑↑3=65536 であるが、2↑↑↑4=2↑↑65536は、DERIVEでは、メモリーオーバーとなり計算不能。 一方、↑が2本の場合、xを実数とすることも可能で、x↑↑nとしたとき、x=exp(1)^exp(1)^(-1)≒1.44467861・・以下では、nが大となっても収束。 なお、↑↑↑以上は、定義からも明らかのように、xが整数でないといけない。 |
クヌースの定義では、x↑↑nは、xが実数でもよいが、↑が3本以上の場合は、xは整数でないといけない。この点の見直しは可能か? クヌースの矢印記号以外の巨大数の表記方法 |
6 | Hyper-V | 「Windows 8.1のインストールとHyper-Vの利用」 2014年5月の今月のご挨拶 |
Windows 8.1でHyper-V上にVISTA等のOSとアプリケーションをインストールして使用し始めた。 | その後の使用感想は? |
7 | 丁半がそろう | 「判決の品質管理」 2009年8月の今月のご挨拶 |
サイコロの目は、ばらつきがあるので、丁が続くこともあれば、半が続くこともあります。 賭場の参加者は、たいていは、どちらかに偏ると思われますので、「揃う」ためには、誰かが、少ない側に追加して賭けるか、勝負後に調整しなければなりません。 ドラマでは、そこの場面が無く、すぐに「丁半揃いました!」となるので、違和感があります。 |
賭場で「丁半そろいました」というとき、実際は胴元が少ない側に懸けるのかまたは調整するのか? |
8 | ムベンバ効果 | 「実験は我が師、理論は我が友」 2008年9月の今月のご挨拶 |
NHKの「ためしてガッテン」で2008/7/9に放送された「今年も猛暑!お宅の「氷」激うま大革命」というタイトル中の一部「お湯は水よりも早く凍る」という実験が、大反響を呼んだのでした。 番組の真意は、「条件によっては、お湯は水よりも早く凍ることもある」ということなのですが、物理学者の大槻先生のブログで「実に馬鹿馬鹿者」と評されて、論争に火が点いたようです。 このムベンバ効果という言葉は、「ウィキペディア」によれば、タンザニアの高校生のムベンバさんが1963年に発見したということから来ているとのことです。確かに金属などの固体であれば、高温の物体の方が低温の物より早く冷えることなどあり得ないです。 ただ、ウィキでも指摘されているように、「水という液体が対象」であることにより「水の気化熱」、「容器内の対流速度」などの問題がからんでいること、「凍る」と「冷える」とは必ずしも同じではない」ことなどを考慮すると、簡単に言い切れません。 |
あれから5年を経過し、ムベンバ効果のその後を探る。 |
9 | データの保存 | 「データの生まれてから無くなるまで」 2007年5月の今月のご挨拶 |
パソコンの生・老・病・死・そして、再生のライフサイクル(主としてWindows 7 Professionalの場合) 生を管理する(データの作成と保存) 生を管理する-2 アプリの設定情報 老を防止する (Cドライブのバックアップ(自動システム回復(ASR)用バックアップ)) 老を防止する-2 (データのバックアップ) 老を防止する-3 (バックアップの準備) 老を防止する-4 (バックアップ以外の方法) 老を防止する-5 (チェック&デフラグ) 病を癒やす (個別データの復旧) 病を癒やす-2 (ASRバックアップデータのリストア) 病を癒やす-3 (リカバリ) 病を癒やす-4 (ウイルス・スパイウェア・不正接続対策) 死 (廃棄) 再生 (データの移行) |
Windows10 用に内容を見直す。 USBメモリー、SDカード、 CD-R、DVD-R等記憶媒体の保存方法と寿命についての内容を追加する。 |
10 | 写真や音楽のデジタル化 | 「音楽や動画の再生と保存」 2006年8月の今月のご挨拶 |
音楽や動画の規格と再生法 カセットテープの音楽のデジタル化 VHSテープのデジタルビデオ化 |
ネガフィルムのスキャンと保存 最近の音楽規格とその再生 ネガフィルムのスキャンと保存については、2016年8月の今月のご挨拶「アナログ写真のデジタル化」で解決。2018/12追記 |
11 | 回転楕円体球欠 | 「石の安定性」 DERIVE de ドライブ 38 |
3次元の球の一部を平面で切断したものを球欠という。 球欠の体積と重心を求めた。この結果を基に、傾いた面にのせた状態の球欠の安定性を検討した。 また、回転楕円体の一部を欠いたものを「楕円体球欠」と呼び、38回では、回転楕円体の中心対称軸に垂直な平面で切断した場合のみ、体積と重心を求め、安定性を考えた。 |
回転楕円体について、対称軸に垂直な平面ではなく、斜めに切断した場合の楕円体球欠の体積と重心を求める。 その結果を基に傾いた面にのせた時の安定性を考える。 DERIVE de ドライブの第74回で一応解決。2015/8追記 |
12 | 高速ラプラス逆変換 | 「積分(5)(高速ラプラス逆変換2)」 DERIVE de ドライブ 45 |
ラプラス変換の像関数F(s)が解析的に与えられている場合、その原関数f(t)を数値計算で求める方法がある。原理的な方法では、項数を多くとる必要があるが、Euler変換を使うことで能率的に行う方法が「Basicによる高速ラプラス変換」(細野敏夫著:共立出版)に記載されている。 その原理とDERIVEでの計算方法を紹介し、例として、F(s)=1/(s^2+1)(f(t)=sin(t))について計算してみた。 |
DERIVEでの計算式をより洗練したユーザ定義関数とする。 原関数がサイン関数以外の例について、具体的に計算してみる。 |
13 | 級数の加速法 | 「数値積分(3)(Euler-Maclaurin展開とラプラス変換、Wijngaarden変換)」 DERIVE de ドライブ 54 |
通常のEuler変換は、正項と負項が交互に現れる交代級数の場合にのみ効果がある。 一方、Wijngaarden(ヴァインハーデン)変換を使うと、正項のみの場合(負項のみの場合も同様)にも交代級数に変換することができ、Euler変換を使うことができる。 |
Euler変換以外の級数の加速法とその効果について調べる。 |
14 | DE公式 | 「数値積分(7)(DE公式 続き)」 DERIVE de ドライブ 58 |
数値積分公式の一つであるDE公式が苦手とする関数は、関数値が正負に交互に振動する関数であるが、それを克服する方法が森正武先生による『二重指数関数型変換のすすめ』(1998年)にある変換を使うものだ。 | DERIVEで試みると、ある数値的不安定が発生する。 不安定性は、DERIVEの有効桁数によって、発生する時点が変わる。おそらくは、二重指数関数による巨大数の出現に原因ではないかと考えられる。 この不安定性を解明し、安定した計算結果を得る方策を探る。 |
15 | 楕円関数値の計算 | 「楕円積分と楕円関数(1)」 DERIVE de ドライブ 60 |
楕円積分と楕円関数のごく基礎的なこと。 DERIVEによる楕円積分と楕円関数の計算 |
楕円積分は、DERIVEの定義関数にあり、精度が高いが、楕円関数の近似式の精度は、低いので、より精度の高いsn関数、cn関数、dn関数をユーザー定義関数として作る。 DERIVEのユーティリティ関数の中に振幅関数がありました。これから、楕円関数の計算が可能です。 第80回「連立常微分方程式の数値解法(初期値問題)(2)」に記載。2016/4 追記 |
16 | 多面体の重心 | 「多面体の体積公式」 DERIVE de ドライブ 61 |
3次元空間に置かれた多面体の体積を計算する公式を求めた。 | 多面体の重心位置を計算する公式を求める。 DERIVE de ドライブの第75回・76回・77回で解決。2015/10追記 |
「調べるだけで、解決しそうなのは、4番の「地デジ」かな」
「そう、他には、7番の「丁半がそろう」、8番の「ムベンバ効果」あたりだ」
「感想を書くだけなので、6番の「Hyper-V」も簡単」
「フィルムスキャンを含む10番の「写真や音楽のデジタル化」も比較的簡単だな。音楽の規格の更新がすこし面倒かも知れないが。
一方、手間はかかるが、難易度が低いのは、9番の「データの保存」。これは、Windows 7の内容をWindows 8.1に合わせて見直すものだからだ。
あとはと、16番の「多面体の重心」は、第61回で体積公式が得られているので、少し工夫すれば、解決できる」
「2番の「閏年」の問題は、すでにWeb上に載っていそうね」
「調べれば、解決の可能性が高い。5番の「クヌースの矢印記号」の他の巨大数の表記法は、同様だ。
やや難しいのは、11番の「回転楕円体球欠」だな。とはいえ、原理的な困難さはない」
16問のなかで、難しいのは、オリジナルな問題である、1番の「道中双六」、3番の「干支拳」か。
「道中双六」は、定式化は、一応できていて、Excelでの数値計算も検証用に使えるなど、干支拳よりも道筋は、見えている。
「干支拳」は、組み合わせの問題なので、得意な方にかかるとあっという間に解かれるかも知れない。
また、12番の「高速ラプラス逆変換」、13番の「級数の加速法」、14番の「DE公式」は、DERIVEならではの難しい部分が重なっている可能性がある。
逆に言えば、どれか、一つが解決すれば、他の問題でも同様に解決できる可能性が高い。
一方、内容が豊富すぎて、どの程度で宿題解決と見なすか困りそうなのは、13番の「級数の加速法」、15番の「楕円関数値の計算」などだ」
「ではと。
そういった先生のご意見を踏まえて、前出の表の一部に色を付けてみました。
白地が難易度が☆、薄い青色が☆☆、薄い緑が☆☆☆、薄い黄色が☆☆☆☆、薄い赤が☆☆☆☆☆、灰色が解決済みです」
最終更新日 2019/12/10
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
では、次回も、また、本欄で元気にお会いできますことを願っています。