笑い話

更新日：2016/2/2

八百屋お七

これまでに「今月のご挨拶」に掲載してきました「笑い話」を独立させたものです。
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　熊五郎：「大家さん。お出かけですかい」
　大家：「おや、熊さんかい。なに、八百屋お七じゃよ」
　熊：「八百屋でお寿司ですかい。大家さんも新しもの好きだね。
　　近ごろ、はやりらしいですよ。野菜のお寿司」
　大：「おいおい。お七じゃ」
　熊：「だから、お寿司でしょ。あっしも寿司は大の好物で。
　　もっとも、ネタは、やっぱり魚だね。ま、ちょくちょくは行かれませんがね」
　大：「困った人だね。お寿司じゃなくて、お七じゃよ」
　熊：「ほー。八百屋さんのところは、お七夜ですかい。
　　じゃ、後で、香典もって、行ってこなくちゃなるめぇ」
　大：「縁起でもないことを言わないでおくれ。
　　人様が亡くなられて、七日目の法要を初七日。
　　あんたの言う、お七夜は、赤ちゃんが生まれて七日目のお祝いのことですよ」
　熊：「知らなかったな。あぶない、あぶない。
　　香典持ってったら、八百屋の野郎に大根でぶん殴られるところだったな。
　　じゃ、赤ん坊か。あー、こりゃ、めでたいな、めでたいな～」
　大：「何を踊ってるんですか。違いますよ。
　　私の言っているのは、お七夜ではなくて、八百屋お七」
　熊：「へ－。八百屋でおひつを売り出すんですかい。
　　今どきの八百屋は、油断が出来ねぇ。コンビニ化してるよ。
　　ちょうど、うちのおひつが壊れちまいましてね。
　　ちょっくれ、行って買ってくるか」
　大：「お待ちな。おまえさんは、そうやって、すぐ飛びだそうとする。
　　違いますよ。おひつ、じゃなくて、おひち。
　　じゃない。こっちも間違えちまうじゃないかね。
　　ひーふーみーのなな」
　熊：「みなまで言わないでおくんなさい。
　　あっしが、全力を出せば、たやすい、たやすい。
　　おい、そば屋、今何どきだ、へー、七つで、というやつですね。
　　七の次が八ということは、お鉢。これが正解」
　大：「大見えを切って、仕様がないな。
　　それじゃ、八百屋お鉢になって、お芝居にならないじゃないか」
　熊：「なんだ、芝居ですかい。
　　八百屋おひちでしょ。知ってますよ」
　大：「・・・」