2016年12月のご挨拶

今年の漢字は「怖」か?

恐・怖・畏・憚

「おそろしい、という意味の漢字は、いろいろとあるのう」

「ま、わたしたち生物は、ちょっとしたことで死んでしまうので、
昔から、なんとかそんな最悪の事態を避けたいという欲求が強かったからでしょ」

「おう、ともちゃんかい。
 今月も、寒いところ、ご苦労さんじゃ。
 毎年、書いている台詞ではあるが、今年も残すところ、1ヶ月となってしまったのう。
 ところで、ともちゃんは、年末年始の予定は、立てているかな?」

「一応、考えてはいるけど、なかなか予定通りにはいかないわね」

「たしかにな。
 ただ、備えあれば憂いなし、やはり何事も準備は、大切じゃ。
 そういえば、さんまさんが司会の『ホンマでっかTV』(フジテレビ:水曜日)の中で、ある評論家さんが、
 『日本では、災難に備えている人だけが生き残ってきた』という趣旨の発言をされていたのが印象に残っておる」

「なるほど。
 日本は、今でこそ、食料をたくさん輸入しているけど、明治以前は、食料は、国内調達しかないので、
 気象の変化による冷害・干害、病害虫などに常に備えていないといけなかったためでしょうね。
 現代は、堤防や品種改良、施肥、薬剤散布など、いろいろと工夫と対策を行っているけど、大きな台風や地震などでは、被害が出てしまうこともあるわ」

「そうじゃのう。
 農作物に限らず、どんなに対策を施しても、被害をゼロにすることは、難しい。
 まずは、人命を第1に考えて、備えと行動することが必要じゃ」

「そういう意味で、自然をおそれる気持ちは大事ね」

「そういうことじゃ。
 そこで、今年の漢字を「」としてみたのじゃ」

「えーと、日本国語大辞典によると、おそろしい意味の言葉の方言分布は、
 東日本が『おっかない』、
 西日本が『おそろしい・こわい』ということよ。
 へー、これは、知らなかったわね。
 さらに、西日本を細かく分けると、
 関西が『こわい』、その外側が『おそろしい』、
 中国地方『きょーとい、いぶせー』、
 九州東部『えずい、おずい』、など。
 えずい、いぶせー、などは、聞いたことなかった」

「語源由来辞典さんのベージ(http://gogen-allguide.com/)を拝見すると、
 『おっかない』の語源として、、
 こわい⇒おお(感動)+こわい⇒おおこわ⇒おおこわない⇒おっかない、と変化したという説と、
 おおけなし(恐れ多いという意味)⇒おっけなし⇒おっかなし、と変化してきたという説が紹介されている。
 また、江戸中期の方言辞典『物類称呼』では武蔵近国の言葉としていて、主に東日本で用いられた言葉のようである、とも説明されている」

「たしかに、怖いものだから恐れ多いとも言えるし、恐れ多いので、おっかないとも言えるわね」

「おそろしいからこそ、備えを怠ることが減るじゃろう。
 その意味で、おそろしいという感覚は、大切にせなあかんな。
 次節で、今年のおそろしかった出来事を振り返ってみよう」

2016年 おそろしかったこと

「年末になると、今年を振り返るみたいな番組が放送されるわね」

「そうじゃな。
 11月までの、国内の事件を振り返ると、
 熊本地震(4月)と鳥取地震(10月)があった。
 特に熊本地震では、最初の大きな地震の翌日に同規模の地震が起きたことで被害が大きくなった」

「11月の福島県沖の地震では、大きな被害はなかったものの、2011年3月の『東日本大震災』以来となる比較的大きな津波が発生した。
 また、8月の台風では、岩手県、北海道で大きな被害があったわ。
 特に、被害が出た台風では、しつこいぐらい、天気予報等で、注意を呼びかけていたにも関わらず、岩手県岩泉町の老人施設を初めとして人的被害が出てしまったのが残念。
 台風は、かなり正確に予測できているのに」

「堤防があるから大丈夫、建物があるから大丈夫と過信しすぎるのは、いけないという例じゃな。
 いっそうの減災を図るには、行政だけに任せず、それぞれの管理者が、一つが大丈夫でないときは、どうしたらよいかを事前に考えて、マニュアル化しておく必要があるのう。
 また、行政側としては、あえて対策を取らない地域やそうした地域から撤退するという選択肢も必要なのかとも思う」

「河川や海岸の堤防などね。
 堤防を作ったり、その高さを増していくことだけに専念してきたけど、どんな台風や津波が来ても乗り越えられないようにすることは、現実的じゃない。
 また、少子高齢化が進み、総人口も減りつつある中で、山間・僻地から順次、人々を周辺地域に誘導していく。
 国土のコンパクト化を目指す必要がある時期に来たと言うことかも知れないわ」

「東京都の木造家屋密集地なども、空き家が増えてきたらしい。
 無住の空き家は、取り壊して、更地にして、燃えやすい住環境を変えていかないといかん。
 さてと、自然災害以外では、やはり、相模原市の障害者施設での惨殺事件(7月)が衝撃的じゃった。
 わしも、ニュースを見て、間違いじゃないかと思ったぐらいだからな」

「たしか、19人の方が殺されて、多くのけが人を出してしまったのね。
 もっと、驚いたのは、容疑者が犯行の計画と自分の考えを長文の手紙にして、衆院議長公邸に持ち込んでいたことね」

「そうじゃな。
 同じ施設で働いていたのだから、敷地や建物内部の構造を熟知していて、短時間での犯行が可能となったと言える。
 神奈川県警から施設側へは、連絡があったのじゃから、特に夜間の防犯対策や職員への周知など、出来たことがあったのではないかと思うのう」

「手紙そのものは、県警から施設には、渡されなかったと言うから、長文の手紙の異常な熱気が伝わらなかったのかもしれないとも言われているわ」

「そこは、残念な点の一つじゃ。
 相模原以外でも、川崎市の高齢者施設で、入所者が投げ落とされた事件(2月)、9月に横浜市の病院で点滴に消毒薬が混入されて2人が亡くなった事件があった。
 後者の事件では、12月現在、まだ、容疑者が逮捕されていない。
 社会への様々な不満や不平などが障害者や高齢者などの社会的弱者に押しつけられたという印象だなあ。
 もっとも、最近、目立つ高齢者ドライバーによる自動車事故では、高齢者は、加害者にもなってしまっているがの。
 一方、海外では、バングラデシュでテロ(7月)があり、7人の日本人も犠牲になった」

「同じ、7月に、フランスのニースでは、トラックを使って、道路を走行して、多数の市民をひき殺したテロ事件があった。
 少なくても、80人以上が死亡し、200人以上の負傷者が出たんだよね。
 自動車を使ったテロというと、『車爆弾』はあったけど。
 事件では、単に自動車を暴走させて、人をひき殺すという新しいテロの手法を世界に紹介してしまったわ」

「テロは、中東だけでなく、アフリカにも範囲を広げているからのう」

2016年 よかったこと

「8月には、リオデジャネイロのオリンピックがあったな。
 大会前は、準備が間に合うのかと心配されていたが、TV中継を見た限りでは、概ね、うまく運営されていたんじゃないかという印象だった。
 建物や装飾なども、仮設的なもので十分に間に合うのを知った意味で、2020年の東京オリンピックに向けた知恵をいただいた感もあった。
 金・銀・銅メダルの総数 41個は、日本のオリンピック史上最多じゃったしな」

「そうね。
 ま、建物については、耐震性を考える必要はあるけどね。
 他には、3月に北海道新幹線開業、
 5月の伊勢志摩サミット、
 6月には、18才から選挙権という話題もあった」

「7月には、ポケモンGOが日本でもできるようになったな。
 一時は過熱して、スマホを見ながら、歩いたり、自転車に乗る人まで、多く現れた。
 10月のノーベル医学・生理学賞に、東京工業大学の大隅良典 栄誉教授が受賞。
 細胞のオートファジー機構の発見というテーマじゃった」

「訪日外国人が2000万人を突破(10月)も、おめでたい話だったわ」

「そうじゃったな。
 カジノなど作らんでも、いいのではないかと思うがのう」

終わりにあたって

 今回もご覧いただきありがとうございました。
    本年も残すところ、あとわずかとなりました。
    どうぞ、皆様、ご自愛くださいますようお願い申し上げます。
    では、新しい年も、本欄で元気にお会いできますことを願っています。

 更新日 2016/12/4

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