3次方程式の一般の解法、すなわち、根の公式は、普通、学校(の数学科以外)では扱わないと思いますが、高校で複素数を習った際に、1のn乗根は、出てきましたね。
最も簡単な3次方程式、x^3-1=0の解は、ω=(-1+√3i)/2、ω^2=(-1-√3i)/2、1の3つです。3次方程式の一般解では、この複素根ωを利用すると複雑な式が簡潔になります。
なお、1次方程式を含めて最高次の次数が奇数の代数方程式は、少なくとも1つの実根を持つことは、1次方程式の場合と同様に平面上のグラフを考えれば、容易に理解できます。
さて、このあたりは、私が高校生の頃に購入した、科学新興社刊行のモノグラフシリーズ「9.数学史」(矢野健太郎著)(1967年)にやさしく、書かれています。
一般の3次方程式、a*x^3+b*x^2+c*x+d=0は、同書によれば、変換x=y-b/(3a)により、y^3+m*y=nに簡単化されます。
DERIVEでやってみましょう。数式入力行に上記を入力し、ツールバーのSUBをクリックしてから、xをy-b/(3a)と変換します。
すると、m=(3ac - b^2)/(3a^2)、n=-(27a^2d - 9abc + 2b^3)/(27a^3)となります。
確かに上記の変換で一般の3次方程式は、y^3+m*y+n=0に帰着されますね。同書によれば、この変換は、ピエートによる創案と書かれています。
次なる問題は、このような、3次方程式の解法です。イタリアのタルタリア(あるいはカルダノ)の解法は、次のようなものです。
まず、簡素化された方程式、y^3+m*y+n=0、ここで、y=u+vと置きます。u^3+v^3+(3uv+m)(u+v)+n=0となります。
そして、u^3+v^3=-nのようにu、vを選べば、3uv+m=0から、u^3v^3=-m^3/27ですので、積と和の分かった、u^3とv^3は、2次方程式、t^2-nt-m^3/27=0の2根として得られることになります。
こうして、u^3とv^3が得られますので、立方根をとった上で、y=u+vを思い出してyに戻すと、yの根の一つが得られます。そして、前出の変換によりxに直すと、ようやく根が得られました。
(※他の2根は、3次方程式を(y-根)で除した後の2次方程式を解いて得られます。)
2次方程式に比較するとかなり複雑ですね。ただ、ピエートによる変換x=y-b/(3a)は、2次方程式では、変換x=y-b/(2a)により完全平方式が得られますので、これにヒントを得たのかも知れません。
数式処理ソフト DERIVE(デライブ)では、x^3+m*x+n=0の解として、実根の他に2つの複素根を含めて、直ちに与えてくれます。
なお、1の3乗根をω=(-1+√3i)/2と書くと、M=(1/2)(-n+√(n^2+4m^3/27))、N=(1/2)(-n-√(n^2+4m^3/27))として、この3次方程式の3根は、M^(1/3)+N^(1/3)、ωM^(1/3)+ω^2N^(1/3)、ω^2M^(1/3)+ωN^(1/3)とも表されます。すなわち、一つの根が得られれば、前述の※のように改めて2次方程式を解く必要がないことになります。
具体的な方程式で確かめてみましょう。x^3 - x^2 - 4x - 6=0の場合です。この解は、x = -1 -i 、 x = -1 + i
、 x = 3となりますね。
変換y=x+b/(3a)=x-1/3により、y^3-13y/3-200/27=0となります。すなわち、m=-13/3、n=-200/27です。これをM、Nの式に代入すると、M=17√3/9
+ 100/27、N= - 17√3/9+100/27となります。
これから、yの一つの根が、M^1/3+N^1/3=8/3とでます。これでyの実根が8/3と分かりましたので、与式を(y-8/3)で割ります。
すると、9y^2 + 24y + 25=0が得られますので、ここからy = - 4/3 - i 、 y = - 4/3 +iであることが分かりました。
一方、1の3乗根ωとω^2を使う方法では、ωM^1/3+ω^2N^1/3=- 4/3 + i、ω^2M^(1/3)+ωN^(1/3)=- 4/3
- iが得られ、上記で得られた答えと一致します。
結局、原方程式 x^3 - x^2 - 4x - 6=0の根は、8/3+1/3=3、-4/3+i+1/3=-1+i、-4/3-i+1/3=-1-iとなるので、確かに合っていますね。
3次方程式も現実世界の様々な場所に現われます。
たとえば、よく知られた例として、「まんじゅう等分の問題」があります。
半径1の半球(「まんじゅう」と見立てみましょう)を底面に水平な平面で2つに上下に分割する場合、それぞれの体積が等しくなるような分割位置の高さh(z座標)を求めよ。
DERIVEでこの問題を扱う場合には、高さzのところの半径が√(1-z^2)で与えられ、その面積は、π×(1-z^2)であることに注目します。
そして、微小高さdzの円筒の体積が面積×dzであることから、z=hから1まで積分して分割された上部の体積を求めます。
解析メニューから積分を選択して、積分域をhから1として定積分しましょう。
結果は、π(h^3 - 3h + 2)/3となります。これが球の体積=4π/3の1/4である、π/3と等しくなることから、方程式は、次のようになります。
h^3 - 3h + 1 = 0、従って、その根は、h = 2COS(2π/9)、 - 2COS(π/9)、 2SIN(π/18)と3つありますが、0~1の間に入ることから、
求める解は、h=2Sin(π/18)≒ 0.3472963553となります。