数式処理ソフト DERIVE(デライブ) de ドライブ

13.4次方程式

4次方程式

「3次の次は、4次だね」

「おや、ともちゃんか。同じ「さんじ」でも3時のおやつは文・堂ではないのかな」

「おー寒いギャグ。まあ、それもあるけど、3次方程式のように4次もやれるのかしら?」

「うん。
数式処理ソフト DERIVE(デライブ)の12回で引用した矢野先生の本には、一般の4次方程式 ax^4+bx^3+cx^2+dx+e=0が変換、y=x+b/4により、次のように簡素化されると書かれているな」

「じゃ、私がやってみるよ。なるほど、y^3の項が消えるのね。この後どうするのかしら?」

「今の変換によって一般の4次方程式は、y^4+py^2+qy+r=0となったの。
y^4=-py^2-qy-rと変形して、両辺に2y^2t+t^2を足すと、次のようになる。
(y^2+t)^2=y^2(2t - p) - qy - r + t^2
ここで、右辺がyの1次式の完全平方になるようにtを計算することを考える。
それには、右辺をyの2次方程式と見たときの判別式D=q^2-4(2t-p)(t^2-r)をゼロとするようにtを決定する必要がある。
そこで、必要なtは、次の3次方程式を満たす。8t^3 - 4pt^2 - 8rt + 4pr - q^2 = 0
これは、前回の方法で解けるので、そのtをt0と書けば、与式は、(y^2+t0)^2=(αy+β)^2となるので、y^2+t0=±(αy+β)は、yの2次方程式となり、解を求めることができる、とまあ、こんなことであるな。
矢野先生の本によると、ここで紹介した、3次方程式と4次方程式の解法が載っている本は、1545年にイタリアのカルダノという数学者が書いたということだよ。16世紀のことだな」

「う~ん。相当、大変だわ。5次方程式となると更に大変になるのでしょうね?」

「そのとおりだ、と言いたいところじゃが、5次以上の代数方程式の根の公式は、ないのだよ」

「えー。解がないのかしら?」

「いや、一般にn次の代数方程式には、重根を重複して数えるとしたとき、複素数の範囲内で、必ずn個の根がある、ということが、オホン。ここのところ、心して聞くがよかろうぞ」

「ちょっと、待って。さっきから代数方程式、代数方程式ってさかんに言っているけど、それってなんのこと?」

「おっ。ちょっと、先走ったのう。
各係数akが複素数であるn次方程式、Σakx^k=0のことじゃよ。オホン。さて、かの有名なガウス先生は、1799年にこの定理を初めて証明したのじゃ。代数学の基本定理と言われているな」

「で、おじさんは、その証明が分かる?」

「いや、これは、痛いところをつかれた。こりゃ、今となっては、分からん。
しかし、数学科に行った連中は必ず習ったじゃろうな。以前読んでおった「数学セミナー」にも載っていたことがあったな。
なんでもガウス先生は、その生涯の中でこの定理を何通りもの方法で証明したということじゃったな」

「ふ~ん。じゃ5次以上の場合は、数学者が根の公式を思いつかないだけじゃないの?」

「まあ、そう考えるのも無理はないのう。
1545年以降、多くの数学者達が5次方程式の根の公式を探し求めた。
しかしじゃ、アーベルという早世したノルウェー生まれの数学者が1826年に5次方程式の根の公式が存在しないこと、より正確には、加減乗除と根号の式だけで解を与えることはできないことを証明したのじゃ。いや、アーベルの生涯は、小堀 憲先生の「大数学者」(新潮選書)に詳しく書かれておるのでいつか読むとよいの・・ここの辺りは、涙無くして読めんのう・・・・」

「ちょっと、ちょっと。一人で感慨にふけらないでくださいね。
じゃ、250年近くも公式がないって分からなかったのね?」

「まあ、そうだな。
もっとも、後の方になるとあるいは、ないのではないかという人もおったかも知れんのう」

「それはそうと、DERIVEでは、4次方程式は、どうやって解くの?」

「肝心のテーマを忘れてしまったな。
4次は、特に3次までと変わったことはないのだ。メニューの解くから「方程式」を選択すればよいのじゃから」

「何か、例題はないかしら?」

「まんじゅうの問題では、3次方程式が登場したの。x^4 - x^3 - 26/9x^2 + 46/9x - 20/9 = 0をDERIVEで解いてみるかの」
「DERIVEで、一瞬で答えが出るのね。x = 1 - i/3 、 x = 1 + i/3、 x = -2 ∨ x = 1」

「うん。容易じゃったな。まあ、このようにいつでも解が容易に出るのは、4次方程式までじゃということは、知っておいてほしい」

「じゃあ、5次以上の場合は、どうやって根を求めるの?」

「それは大事なことだの。1次方程式のところで出てきたグラフを使う方法は、重要だな。なんと言っても現実世界では、実数が大切なのじゃが、実根は、原理的にグラフで大まかに分かるからの」

「それだけ?」

「もちろん、それだけじゃないよ。代数方程式を含めて何らかの方程式の数値解法は、様々な工夫がなされているのじゃ。それは、このブログでも、出てくるじゃろう」