2018年9月のご挨拶

ニュースの鑑定(フェイクの系譜、他者との関係とSNS)

目次

 (0)平成最後の夏は暑かった
 (1)ニュースとフェイクニュース
   news と 外来語のカタカナ表記
   フェイクニュース
 (2)個人の情報発信とSNS
   SNS の歴史と役割
   SNS疲れや他者との関係意識の変化
 (3)フェイクニュースの分類
 (4)ニュースの鑑定
   ニュースの鑑定とは
   iPS心筋を移植 (フェイクニュース例1)
   STAP細胞 (フェイクニュース例2)
   旧石器捏造事件 (フェイクニュース例3)
   火星に運河を発見 (フェイクニュース例4)
   森友問題 財務省公文書改ざん事件 (フェイクニュース例5)
 (5)終わりにあたって

(0)平成最後の夏は暑かった

「何事もなく進めば、平成の夏は、今年が最後となるのう」

「そうね。
 2019年4月30日に現在の天皇陛下が退位され、2019年5月1日に皇太子殿下が即位される予定なので、平成31年は、4月末まで。
 だから、『平成の最後の春』は、まだ、あるんだけど、平成31年の夏、秋、冬は、無いので、今回が『平成の最後の夏』だった訳ね」

「ともちゃん。ご苦労さんじゃな。
 9月に入って、ようやく暑さが一息ついたのう。
 さて、今年の夏は、2010年以来の暑さと言われていたので、そのあたりをグラフで確認してみた。
 
 上図は、東京都練馬区の気象庁の観測点における1971年(昭和46年)~2018年(平成30年)までの7月と8月の平均気温の傾向を表したものだ。
 データは、http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php から。
 横軸は、西暦年の下2桁、左縦軸は、各年の点数、
 年の点数は、7月または8月のいずれかの平均気温が27.2度を超えた年を黄色で1点、
  7月及び8月の両方の平均気温が27.2度を超えた年は、赤で2点、
 それ以外は、ゼロじゃ。
 また、それらの点数の累計を青色の折れ線にて示し、その累計値の値は、右縦軸で読み取るようになっておる」

「なるほど。
 これを見ると、年を追う毎に、暑い夏が(加速されて)増えてきてる様子が分かるわ。
 ※累計値の近似曲線は、2次関数。
 報道で言われているように、直近では、2010年(平成22年)が暑かったけど、2011年(平成23年)も暑かったのね。
 その前は、2002年(平成14年)1994年(平成6年)1978年(昭和53年)だった」

「2010年の夏の暑さは、今月のご挨拶『私の小道具(3)』(2010年9月)でも取り上げているが、1974年以来、1番じゃった。
 2010年の平均気温は、7月が28度、8月が29.9度だ。
 これに対して、2011年は、7月が27.6度、8月が27.4度だったので、2010年の方が暑かったと言えるじゃろう。
 2018年は、7月が28.7度、8月が29.3度で、2010年と比較すると、若干、低いが、それでも、1974年以来3番目じゃったな。
 なお、2番目は、1994年で、7月が28.3度、8月が28.9度だった。
 ま、(東京都練馬の)平成最後の夏は、十分に暑かったと言って良いじゃろう」

「東京だけじゅなくて、熊谷も最高気温 41.1度と暑さ日本一に返り咲いた。
 また、西日本の夏も暑かったわね。
 ところで、この図を見ると、大まかには、極端に暑かった年の翌年の夏も暑い。
 翌々年も暑い夏が多い傾向にあると言えるわね。
 となると、2019年の夏は、暑いだろうし、2020年の夏も、今年ほどではなくても、暑い可能性が高いんじゃないかしら。
 2010年-2011年-2012年の時のようにね」

「そうじゃな。
 2020年の東京オリンピックの際の暑さが心配されるのう」
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(1)ニュースとフェイクニュース

news と 外来語のカタカナ表記

「新聞、雑誌、テレビは、言うに及ばず、インターネット上を含めて、日々、いや、時々刻々、ニュースが流れている。
 英語の NEWS の語源は、new(新しい)に複数形の s が付いたものじゃろう。※
 ※ newsは、純粋の抽象名詞・単数名詞。形容詞がついても不定冠詞は、つかない。(ジーニアス英和辞典)
  よくお世話になる『日本国語大辞典(精選版)』では、『ニュース』の語釈として、
 『新しい出来事の知らせ。現在では、マスメディア(新聞や放送)により取捨選択されて受手に報道される、多数の人々が関心を持つ出来事。また、その新聞や放送番組をいう。』とあり、坪内逍遙の『当世書生気質(かたぎ)』(1885‐86:明治18年~19年)に『東都新報とかいふニウス(シンブン)のエヂトル(記者)に傭はれるとかいふはなしだ』と使われていて、当時、『ニュース』は、『ニウス』と表記されていたことが伺えるのう」

「たしかに、ネイティブの方の発音例を聞いてみると、ニュースより、ニウスまたはニウズのように、つまって、聞こえるわ」

「そうなんじゃがな。
 外国語のローマ字の表記方法については、文部科学省の告示がある。
 強制力はないものの、多くのメディアや教科書をはじめとする書籍は、これに沿っていると思われる。
 『外来語の表記 内閣告示第二号 (中略)
 3 長音は,原則として長音符号「ー」を用いて書く。
〔例〕 エネルギー オーバーコート グループ ゲーム ショー テーブル パーティー ウェールズ(地) ポーランド(地) ローマ(地) ゲーテ(人) ニュートン(人)
注1 長音符号の代わりに母音字を添えて書く慣用もある。
〔例〕 バレエ(舞踊) ミイラ
注2 「エー」「オー」と書かず,「エイ」「オウ」と書くような慣用のある場合は,それによる。
〔例〕 エイト ペイント レイアウト スペイン(地) ケインズ(人) サラダボウル ボウリング(球技)
注3 英語の語末の‐er, ‐or, ‐arなどに当たるものは,原則としてア列の長音とし長音符号「ー」を用いて書き表す。ただし,慣用に応じて「ー」を省くことができる。
〔例〕 エレベーター ギター コンピューター マフラー
エレベータ コンピュータ スリッパ』
 http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/k19910628002/k19910628002.html
』」

「なるほど。
 上の告示をもとに、時代の変化に合わせた指針として、
 一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会がまとめた『外来語(カタカナ)表記ガイドライン』(第3版:2015/9発行)があったわ。
 その中で、長音の使用について、次のように解説していたわ。
 『外来語を本来の発音どおりに発声する場合、語尾に母音があってもそこに強勢(ストレス)が無 いときは、語尾の音をのばして発音することは無い(例 1 参照)。
 しかし、日本人が日常使用する 外来語は、外来語本来のアクセントや発音とはかけ離れ、日本人特有の聴覚や認知力で解釈された ものがほとんどである。
 たとえば、本来は語尾の母音が実際にのばして発音されない場合でも、他 の音節の母音と同様に強勢(ストレス)を置き、のばして発音する人が多い(例 2 参照)。このた め、長音符号「ー」を付けて表記する方が日本人の発音と一致し、自然と考えられる。
 』
 https://www.jtca.org/standardization/katakana_guide_3_20171222.pdf
 日本人的には、『ニュース』の方が『ニウス』より発音しやすいことは、確かね」

「ところで、ニュースの2つ目の語釈では、『最近起きた、個人的な珍しい事件や出来事などで、他人に伝える価値のあるもの。』が掲げられておる。
 こちらは、ニュースという言葉が一般市民に耳慣れてきてから使われるようになった使い方じゃろう。
 以下では、発信元がメディア(報道機関)以外の個人や団体の場合も含めて、『新しい出来事の知らせ』を『ニュース』と呼ぶことにしよう」
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フェイクニュース

フェイク(fake)=「偽の」という英語を、わしらが熟知したのは、2017年1月にトランプ氏が米国大統領に就任した頃からだな」

「トランプさんは、選挙中から、ツイッターを使い、自分に批判的なニュースを『フェイクニュース(偽のニュース)』と、しきりに批判していたものね」

「その選挙では、ロシアが『フェイクサイト(偽サイト)』をインターネット上に設けて、民主党のクリントン候補を批判し、依頼したのは、トランプ氏またはその側近であるという疑い(いわゆる『ロシア疑惑』)が浮上し、現在も捜査が続いておる。
 トランプ氏が依頼したかどうかは、さておき、そのようなフェイクニュースやサイトが過去に実在し、それなりの影響を与えたと考えられていることは、確かなようだ。
 以下では、『フェイクニュース』あるいは『偽のニュース』とは、発信者の意図が故意か否かを問わず、結果として偽りの内容のニュースを指すことにししよう。
 なお、『誤報』は、発信者(主としてメディア)が偽る意図はなかったものの、結果として間違いと分かった報道じゃが、『フェイクニュース』に含めることにする」

「だけどさ、トランプさんって、大統領になってからも、今日(2018/8)まで、自分の意見や行動をツイッターで、つぶやいちゃう人なのよね。
 わたしは、別にトランプさんのフォロアーじゃないからいいんだけど、米国の人も含めて、よその国のメディアや政府関係者は、寝不足になってしまいそう」

「まったくじゃな。
 世界最強の大国のトップが、わずか最大140文字の短信で、不定期に、時に重要なメッセージを一方的に言い放してしまうことが、今でも信じられんのう。
 しかし、あえて、トランプ氏側に立って、ツイッターを使う長所を考えてみよう」

「そうね。
 個条書きにしてみると、こんな感じかしら。
 ・ 問答不要
  
記者会見や『ぶら下がり取材』と異なり、メディアからの質問に対する回答に悩む必要がない
 ・ 時短
  
記者会見などに要する時間を節約できる
 ・ いつでも・どこでも
  
自分の好きな時、好きな場所で発信できる
 ・ 直接
  
メディアによる選別やコメントを含めずに自分の発言をそのままフォロアーに伝えられる
 ・ 即時
  
メディアの視聴者・購読者には関係なく、世界中のフォロアーにリアルタイムに発信できる
 ・ かく乱
  短い文章なので、曖昧な表現や多義的な表現を使えば、相手をかく乱することも可能
 ・ 追い打ち
  ツイッターの発言に対する反響を知ることができ、それを加味した追い打ち発言が可能
 ・ 訂正自在
  明らかな事実誤認を『言い間違え』とか『舌足らず』と言いつくろうことが可能

 などね」

「こうして、並べてみると、なかなかの迫力と長所があるな。
 後世、トランプ大統領の最大の功績は、ツイッターの活用だった、と言われるようになるかも知れないのう。
 さて、片や、メディアや市民にとっての短所は、上に掲げたトランプ氏が感じているであろう長所の裏返しであり、
 ・ 問答不能
  発信の背景や真意を直後に問いただすことが難しい、
 ・ 時期不定
  つぶやきが不定期であるので、メディアにとって、都合が悪い。
 ・ コメント間に合わず
  つぶやきが直ちに世界に流れてしまうので、メディアの存在価値が問われる、
 ・ 発信力低下
  要職にある人は、多くのフォロアーを有するので、そのつぶやきがメディアよりも大きな影響力を持ってしまう、
 ・ 真偽不明
  つぶやきの確からしさが不明である、※
 ・ 曖昧模糊
  つぶやきが多義的な意味を持つ場合、それぞれの受け手に都合の良い解釈をされてしまう、
 ・ 意図不明
  つぶやき以外の情報が少ないので、メディアが独自のコメントを付しにくい、
 ・ 責任不在
  記者会見や政府の公式発表と異なり、言い間違いや書き間違いだと訂正されると、責任を追及しにくい、

 などじゃろう。
 ※ワシントンポスト紙の調査『ファクトチェック』によれば、トランプ氏が大統領就任~2018/7末までの発言のうち、4229に事実誤認または誤解を招く表現があったとのこと。(読売新聞。深読みチャンネル。2018/8/31)

 ※ 2019/2/15付けの朝日新聞によれば、『ファクトチェック』では、フェイク度合いを『ピノキオ』で表し、0ピノキオから4ピノキオまでとしていた。
 だが、最近のトランプ大統領のフェイク度合いを測るために、同じフェイクニュースを20回以上繰り返したときは、『底なしピノキオ』と認定したそうだ。
 ちなみに、『ピノキオ』(ピノッキオ)は、ピノキオの冒険 から取られていると思われる。
 『原題 イタリア Le Avventure di Pinocchio) 童話。
  イタリアの児童文学作家カルロ=コッローディ(本名ロレンツィーニ)作。一八八三年刊。ジェペット爺さんが作った木の人形ピノッキオが、口をきいて動きだし、あやつり人形の一座にはいったりして種々の冒険をするが、やがて仙女の導きで良い子となり、人間になるまでの話。』(日本国語大辞典
)、
 ピノキオは、他人の忠告を聞かずに、すぐにだまされてしまう人造人間として描かれている。(2019/2/17 追記)

 トランプ氏がツイッターをよく利用するので、その結果、
 ・ メディアの役割とは何か、
 ・ ニュースの信頼性とは何か、
 などの問題をわしらにも投げかけているように思えるのう」

「さらに、トランプさんは、最近(2018/8末)、グーグルなどの検索結果にまで、批判の矛先を向けているのよね。
 グーグル検索には、ランクという概念があって、有力なサイトのランクが高く、ランクの高いサイトからのリンクサイトのランクが高くなる。
 メディアのサイトのランクは、元々高いので、検索すれば、検索語と一致度合いが高いサイトがランク順に表示される。
 目下、トランプさんは、FOXニュースなど一部を除くメデイアをフェイクニュースと攻撃しているので、そういったメディアに批判的な記事が多く載るでしょ。
 すると、どうなるかというと、『トランプ フェイク』などのキーワードで検索すると、批判的な記事が載っているのサイトが数多く検索されてしまう訳よ。
 これって、『自業自得』、またの名を『身から出た錆』またの名を『口は災いの元』じゃないの?」

「とは言え、ともちゃん。
 トランプ氏が、しつこく、フェイクニュースと言い立てるので、支持者を中心に、『なるほど、そうか』と合点してしまう人々も増えているとのことじゃ。
 フェイクニュースと言い続けるのには、それなりの計算があるだろう。
 なんと言っても、トランプ氏は、deal(ディール=取り引き)の天才を自任している人じゃからな」

「でも、こんなトランプさんを見聞きしていると、言論や報道の自由をどのように考えているのか疑わしくなるわね。
 『由らしむべし知らしむべからず』を目指しているように思ってしまう」

「由らしむべし知らしむべからずを体現しているお隣の国では、国民のインターネット利用も厳重に規制・監視されている。
 なぜか、子ども向け映画『プーと大人になった僕』(2018/9)が公開できない。
 習近平氏とプーさんの見た目が似ているからという冗談のような解釈があるが、本当の理由が明らかにされていないのう。
 もし、そんな理由ならば、さすがに恥ずかしくて、報道官も発表できんじゃろう。
 しかし、そんな習氏を笑う資格が、どうも、トランプ氏に、ないというのは、残念な真実じゃ」

「トランプさんに限らず、多くの個人がインターネットを通じて、情報の発信ができることは、基本的には、いいんだけどね。
 偽の情報をわざとつぶやいたり、偽の情報をサイトに公開したりする行為が増えてきたわね。
 こういう偽情報を流す人は、単純な勘違いや記憶違い、愉快犯や極端な思想・信条を『ヘイトスピーチ』のように流す人など様々でしょう。
 だけど、偽の情報を信じ、自らがつぶやいたり、あるいは、偽のつぶきをリツィートしたりして、意図せずに偽情報の拡散に協力する善良な人も後を絶たないわ」

「そのとおりじゃ。
 あらためて、ニュースとは、何なのかを考えてみたい。
 しかし、その前に個人の情報発信とそれを支えているSNSについて、次節で触れよう。
 個人が簡単に情報発信できてしまうので、フェイクニュースが増えている面があることは、否めないからな」
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(2)個人の情報発信とSNS

SNS の歴史と役割

「1996年に旧 南中野パソコン教室を開講した後、1998年に『情報化と社会の変化に関する要約』を掲載した。
 なお、上の要約は、『パソコン豆知識』の中に置いてあるが、個人の情報発信について、次のように記している。
 ・ 個人において情報の受信から発信へと興味や関心が拡大する。
 ・ 個人で情報を発信するためには、文字はキーボードから、画像はスキャナーや画像作成ソフトを利用して作成することが必要となる。


「いま、この2つの文を読むと、当たり前のように感じてしまうけどもね」

「確かにのう。
 時間の経つ早さを感じるな。
 1998年当時、多くのホームページが会社や団体のものであり、個人のものが、極めて少なかった頃を振り返ってみるとじゃ。
 自画自賛ではあるが、先見の明があったじゃろう。(^^ゞ
 この頃から、検索サイトを皮切りに、掲示板やブログサービスをはじめとして、様々な『ソシアルネットワーキングサービス(SNS)』が徐々に広まった。
 今もあるものとしては、プロバイダーのホームページやブログサービスなどを省いて記載すると、たとえば、
 ・ 2ちゃんねる、1995年~、インターネット掲示板、
 ・ Yahoo ! Japan(ヤフージャパン)、1995年頃~、検索、ブログ、オークション、ショッピングなど多岐にわたる、
 ・ Google(グーグル)、1998年頃~、機械検索に『ランク』という概念を導入し、検索の世界を席巻した、
 ・ mixi(ミクシィ)、2004年~、日本発の会員制サービス。当初、入会には、既会員の招待が必要だった。
 ・ niconico(ニコニコ動画)、2007年~、日本発の動画発信サイト
 ・ Facebook(フェイスブック)、2004年~、米国発の実名登録が原則の会員制サービス。
 ・ Twitter(ツイッター)、2006年~、米国発、140字(全角・半角の区別なし)以内のつぶやき。匿名も可。
 ・ YouTube(ユーチューブ)、2006年~、米国の動画サイト。匿名も可。
 ・ Instagram(インスタグラム)、2010年に米国に始まる。写真とそれに添える短文が中心。匿名も可。
 ・ LINE(ライン)、2011年~。インターネットを利用した無料電話・メッセージ交換アプリとしてスタート
 などのサービスが現れ、多くの方が、文章、写真、動画、音楽まで、インターネット上に公開するようになっている」

「会社や公的機関なども、これらのSNSを利用して、自らの情報の発信や人々からの情報の受信するところが増えているね。
 これら SNSから、『リア充』、『インスタ映え』、『ユーチューバー』など、流行語も生まれている」

「さて、あらためて、振り返ると、たった20年で、ここまで、個人の情報発信が盛んになったことに驚く。
 そんな、急速な拡大は、次のようなハードとソフト面の開発と発達に支えられた思うのう。
 ハード面では、
 ・ インターネット回線の家庭への普及とそのブロードバンド化、無線通信機器の速度向上、
 ・ パソコンの低価格化、携帯電話やスマホに代表されるモバイル機器の発明と発達、

 ソフト面では、
 ・ 上に掲げたような利用者の負担が少ないサービスの開発と普及
 などは、個人の情報発信を進める上の両輪となったのう。
 ちなみに、1998年に、わしが予見できなかったのは、iPhone (アップル社:初代は、2007年発表)に代表されるようなモバイル機器の発明と発展じゃったな。
 近年は、個人が利用するパソコンとモバイル機器との数的割合は、逆転したようだ。
 また、グーグル検索では、現在、パソコン向けサイトが基準になっていて、モバイル機器で検索した際も、パソコン向けのサイトの順番に従って、表示されるそうじゃ。
 しかし、今後は、モバイル機器向けサイトの順位が標準になるというニュースもあった」
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SNS疲れや他者との関係意識の変化

「だけど、最近は、『SNS疲れ』なる言葉も生まれていて、たとえば、
 ・ Facebook で実際の生活(リアル)を普段よりも良く見せて、多くの『いいね!』をもらいたいと努力して疲れる・・、
 ・ Instagram でおしゃれな写真をアップすることが主な目的となってしまい『インスタ疲れ』に・・、
 ・ LINE で友達からの通信に早く返信しないといけないとあせってスマホ依存症に・・、

 ・ Youtube で再生回数を競って、危ない動画を撮影・アップしたり、違法行為を犯して警察に逮捕される人まで・・
 など、24時間、SNSでつながるのは、どうなのかな?、とマイナス面もクローズアップされているわ」

「他人とつながったり、他人に認めてもらいたいというのは、人の欲望のうちで大きなものの一つじゃ。
 子供でなくても、他人に褒めてもらうと喜びを感じて、また、意欲も高まる。
 しかし、『過ぎたるは及ばざるがごとし』で、つながること、認められることに執着しすぎるのは、本末転倒じゃ。
 あくまで、日常生活の延長で、つながって、認めてもらうというのが理想だろうな。
 SNSが登場するまで、普通の人は、他者とのつながりと言っても、そんなに多くはなかった訳だしな」
 
「だから、某若手女優さんと某IT企業社長さんとのSNSに大きな反響があったのね。
 いろんな人達がコメントしたので、ずいぶんと話題になったわ。
 ま、ほとんどすべての人達にとって、とうてい、体験できないことなのでね。
 やっかみだと思う」

「そうかもしれんがの。
 かつてのスターの様子も週刊誌やテレビなどで取り上げられていた。
 でも、メディアでそういう報道がされた場合は、そんな反応は、なかったんじゃないかな。
 羨ましいとは、思われてたんじゃろうがな」

「そうね。
 一般のわたし達の言動をメディアが報じることは、まあ、ない訳で、そこは、みんな、十分に理解しているのね。
 ところが、SNSという舞台を使えば、一般のわたし達の言動を同じSNSで流せる。
 でも、(嘘の写真などを使わない限り)あの人達のようなことは、できっこないから、そこが口惜しいんだと思う」

「なるほどのう。
 メディアが報じる場合、舞台に例えると、俳優と観客のわしらは、別の立場だ。
 観客席のわしらは、舞台に上がれないし、俳優が観客席に降りてくることもない。
 言い換えれば、わしらは、舞台上の俳優をわしらとは違う種類の人として、客観的、理性的にとらえている。
 賞賛したり、けなしたりしても、負の感情は、一定の範囲内に留まる。
 一方、SNSの場合、同じSNSを使っている人を同じ仲間と感じて、主観的、感情的に見がちじゃ。
 その結果、相手にねたみ、やっかみを感じた場合、自分のドロドロした感情が吹き出すのではないかな?」

「そうかもしれないわね。
 SNSが登場する以前と以降を図で表すとこんな感じになるんじゃないかな。

 SNS登場前またはSNSを利用していない人の他者との関係意識

 
 上の図で表した仲間とよそ者との区別は、地域や国あるいは、その人の職業、年齢、性別などにより、違いは、あるでしょう。
 ただ、日本の同じ地域、同じような年齢、同じような職業に限ると、似ていると考えられるわ。
 一方、SNS の登場後、SNSを利用している人の他者との関係の捉え方は、次のように変化した」

 SNS利用者の自己と他者との関係の捉え方
 

「ほー、これは、面白いな。
 では、わしは、ともちゃんの書いてくれた図を元に、もう少し、整理してみた。

 SNS登場前またはSNSを利用していない人の他者との関係意識
 
 上の図は、SNSの登場前または利用していない人の他者との関係意識じゃ。
 自分が仲間と感じるのは、血縁関係、地域(地縁)関係、仕事関係、友人関係などの関係者に限られる。
 なお、この4つの関係以外にも、学校、趣味、スポーツ、恋愛、宗教など、様々な関係があり得るが、煩雑になるため割愛した。
 つまり、なんらかの『関係者』以外は、最初から、自分の仲間になる可能性がないのだな」

「それが、東京などから地方に移住した人が、なかなか地域に溶け込めないケースがある理由ね」

「そうじゃろうな。
 自分の故郷だったり、近親者がいたり、地域の会社などに勤める場合は、関係者になるから、そうは、ならんと思うけどな。
 そういう関係がほとんど無い場合は、厳しいケースもあるかも知れない。
 さて、血縁関係であれば、血縁の近さや年齢差など、自分と相手との距離を測る尺度が存在する。
 その尺度は、仕事関係であれば、役職や年功の差、取引先であれば、自社との関係が濃いか薄いかなどじゃろう。
 わしら、日本人は、絶えず、相手との距離を測り、それに応じて、言動を変えてきたので、挨拶や敬語が複雑になったと思う。
 そして、それらの尺度で測った距離が、ある範囲に収まる時に相手を仲間と感じるのだろう」

「平社員と社長とは、仕事関係ではあるが、距離が大きすぎるので、仲間と感じにくいということね。
 血縁でも、離れた距離にいる(=遠い)親戚は、仲間とは感じにくいことも確かだわ。
 ということは、範囲外である人達は、外の世界の人、つまり、よそ者なのね」

「ま、同じよそ者でも、その程度には、違いは、あってもな。
 例を挙げれば、海外で事故や事件が起きた場合に日本のメディアで必ずと言って良いぐらいに登場するフレーズ、
 『(被害者には)日本人は、含まれていません』 があるじゃろう。
 このフレーズは、日本人の仲間意識から発せられる言葉でもあると思うのう。
 ※ 中島みゆきさんの『4、2、3』(アルバム『私の子供になりなさい』)を想いだす。」

「なるほど、それは、分かりやすい説明ね。
 でも、同じ日本でも、地域によっても大きな差があるでしょ。
 歴史がある地域では、伝統や格式が重んじられて、仲間意識が強いわよね。
 たとえば、京都とか沖縄とか」

「そうじゃな。
 東京でも、下町などの一部を除くと大半が明治以降に移り住んできた人達じゃ。
 北海道も似たような状況じゃな。
 こういった地域を除く、京都や沖縄を含めて、他のほとんどの地域が伝統や格式を重んじているじゃろう。
 片や、東京などでは、自分と家族以外には、身内が東京にいないことも少なくない。
 となると、自分と家族は、仲間だが、それ以外は、ほぼ仲間でない。
 従って、その小さな仲間から見れば、ほぼすべて他人であるため、東京の他人と他の地域の他人とに分けて考えない。
 これが東京に住む人が東京人という共通の仲間意識を持てない理由であり、東京が『ふるさと』になりにくい理由でもある」

「ま、仕事関係とか友人関係は、あるでしょうが、血縁、地縁関係は、少ないってことね。
 そう考えると、大まかには、正しいかも。
 わたしも、東京生まれなので、故郷がある人が、『やっぱ、田舎はいいよ』と話すのを聞くと、羨ましいけど煩わしく感じる時もあるよ。
 『じゃ、田舎に帰ったら!』と言いたくなるのよね」

「ともちゃん、脱線しかけとるぞ。
 さてと、前置きが長くなったが、このモデルだと、ともちゃんの前述のタレントの話で、タレントは、外の世界の人と感じるのだ。
 なので、タレントの言動を冷静に観察し、批評できることが多いと思われる。
 なお、タレントなどを含めた外の世界の人の動向は、メディアの報道によって、見聞きする仕組みだ。
 次は、SNS 登場以降で、SNSを利用している人の他者との関係意識を図示してみよう。

 SNS利用者の他者との関係の捉え方
 

 SNS利用者は、他者との関係について、二つのモデルを使い分けていると思われる。
 一つ目は、上の図の右側の部分で、これは、従来の意識を表している。
 二つ目は、上の図の左側の部分で、他者との新しい関係に関する意識である。
 同一SNS利用者は、自分、友だち(自分が承認した利用者)、それ以外の利用者の3者に分類される」

「モデルが2つ、並列に存在するのね。
 従来の生活がなくなったわけではないものね。
 わたしも、SNSの『友だち』概念に出会った時は、最初、抵抗があったわ。
 なんなの、友だちって?
 本当の友達以外の家族や先生なども、友だち、にするの?」

「アクセス権を制御する手段ではあるのじゃが、日本のように、複雑な人間関係を常に意識して生活している者からは、生まれにくい単純化だな。
 さて、自分にとって、友だちは、文字通り、仲間であるが、それ以外の利用者に対しても、仲間意識を感じていると思われる。
 注意すべき点は、
 ・ 友だちとは、おまえとおれとの関係であり、友だち以外の利用者とは、あなたと私の関係である。
 ・ 同一SNS以外の人に対して呼びかける呼び名がない、→ よその人。
 ・ 友だちの中にグループを作ることができる場合がある。
 ・ グループは、何らかの目的や役割を持った友だちの集まりである。
 ・ グループ内で、自分と他のメンバーとの距離を測る尺度がないか希薄である。

 ということかな。
 本来、SNS上の相手の信用度合いは、従来のリアルな関係よりも見分けにくいはずだ。
 ところが、若い人が親や先生などの従来の関係者よりも、同一SNS上の相手を信頼するケースがある。
 相手が普通の人ならば、まだ、よいが、犯罪を計画している者であれば、格好の餌食となってしまう。
 たとえば、『座間9遺体事件』のようにな。
 わしには、そこが合点できなかったが、落とし穴に陥る人が左側の図で表した意識で行動していると仮定すれば、理解できる。
 ※ 座間9遺体事件
 2017年10月31日に明るみに出た神奈川県座間市の事件。
 逮捕された容疑者は、SNS上で自殺願望を告白した被害者を巧みに自宅等に誘いこんで殺害したとされている。
 被害者の9人のうち、8人が女性、1人が男性。

 ※上の青字個所は、2018/9/14に追記。」

「でも、SNSで、会社の上司かなんかが友だち申請してくると困るって聞くわね。
 断れば、仕事に差し支えそうだし、許せば、尺度がなかったグループ内に、会社の人間関係が入ってきて、相手との距離を考えるのが面倒」

「仕事用のSNSでない場合は、アカウントを別にするしか有効な対処法がなさそうだな}

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(3)フェイクニュースの分類

「フェイクニュースには、どんなタイプがあるのかという問題ね。
 それを分類する時の要素を考えてみると、少なくとも2つあって、それは、発信元と媒体の区別でしょ。
 そして、発信元や媒体の信頼度、発信元や媒体に偽の情報を流す意図があったか否か、かな」

「なるほど。
 あとは、受信者は、誰かかな。ツイッターの受信者は、直接には、フォロアーだからな。
 フォロアーでない人は、新聞やテレビなどのメディアを通じて、一部のつぶやきを知っているに過ぎない。
 そして、重要な問題は、そのニュースが、どの程度、フェイクなのか、ということじゃないかな」

「たしかにね。
 フェイク度合いは、
 ×=ほぼ不正確、
 △=一部が不正確、
 ○=ほぼ正確、
 ?=真偽が不明または真偽の判断が分かれる、
 の4段階程度かな」

「信頼度は、高=☆☆☆、中=☆☆、低=☆、の3分類程度かのう。
 発信者では、
 ・ ☆☆☆=>内外政府や官公庁、業界団体、大学・研究所など、
 ・ ☆☆ =>地方公共団体、公益法人、財団法人などの諸団体、上場企業、あるいは、その幹部、政治家、専門家など
 ・ ☆  =>それ以外、
 媒体では、
 ・ ☆☆☆=>全国紙、テレビ、ラジオ、官報、白書等の政府刊行物、権威ある専門誌・辞典・書籍など、
 ・ ☆☆ =>業界紙、一般向け雑誌、地方公共団体の広報誌、大手まとめサイト、大手ネットニュースなど、
 ・ ☆  =>それ以外、
 といったところかな。
 ま、『諸説、ございます』、と注意書きをしておきたい気もするがな」

「ははは。
 しかし、この頃は、信頼度が高くても、それが揺らいでしまう問題が頻発しているよね。
 直近でも、国や地方の『障害者の雇用率の水増し』問題があり、発信者の信頼度が高くて、媒体の信頼度も高かったのに、ほぼアウトだもの」

「まったくじゃ。
 水増し、という言葉には、失礼なほどのかさ上げ数字だったからな。
 発信者側に偽る意図があったか否かは、9月時点では、調査中で、不明じゃが、とても、なかったとは言いかねる状況だ。
 なかでも、国税庁の水増し数が多かったのには、『ブラックユーモア』を感じて、悪いが、少し笑ってしまった。
 また、森友、加計問題の国会答弁にしても、一連の発言(の一部)が、そもそもフェイクだったわけで、それをそのまま報道した新聞、テレビもフェイクニュースを伝えてしまっていた訳だからな」

「さてと、こんな風にフェイクニュースの分類表を作ってみました。
 発信者の信頼度は、3通り、意図の有無は、2通り、媒体の方も同様なので、3×2×3×2=36通り。
 真偽の程度を入れると、少なくとも、この4倍の144通りとなってしまうので、とりあえず、その別は、省略したわ。
 なお、グレーの行は、テレビや全国紙等が意図的に偽ニュースを流すケースで、(現代の日本では)かなりレアなケースだと思われる」

「これは、労作じゃ。
 では、次節で、過去のフェイクニュースをいくつか、取り上げて、どれに当てはまるのかを検討してみよう」

番号 発信者  媒体 想定例(必ずしも実例がないケースもある) 欺されやすさ
信頼度 意図 信頼度 意図    
1 有り  ☆  有り  特殊詐欺のチラシによるお知らせ  
2 有り  ☆  無し  悪質な勧誘販売のはがきによるお知らせ
(日本郵便には、意図無し) 
 
3 ☆  有り  ☆☆  有り  悪質な勧誘の雑誌によるお知らせ
(悪質業者発行の雑誌に意図有り)
4 有り  ☆☆  無し  悪質な勧誘販売の雑誌広告によるお知らせ
(雑誌には意図無し)
5 有り  ☆☆☆  有り     
6 有り  ☆☆☆  無し  悪質な勧誘販売の全国紙広告によるお知らせ
(全国紙には意図無し)
▲▲
7 無し  ☆  有り  個人の勘違いのつぶやきをわざとリツイートする  
8 無し  ☆  無し  個人の勘違いのつぶやきを知らずにリツイート    
9 無し ☆☆ 有り 個人の勘違いのつぶやきをわざとまとめサイトで取り上げる
10 無し ☆☆ 無し 個人の勘違いのつぶやきを知らずに雑誌が取り上げる ▲▲
11 無し ☆☆☆ 有り    
12 無し ☆☆☆ 無し 個人の勘違いのつぶやきを知らずに新聞が掲載 ▲▲▲
13 ☆☆ 有り  ☆  有り  大企業が意図的に偽の企業情報を発表したのをわざとつぶやく  
14 ☆☆ 有り  ☆  無し  大企業が意図的に偽の企業情報を発表したのを知らずにつぶやく  
15 ☆☆  有り  ☆☆  有り  大企業が意図的に偽の企業情報を発表したのをわざと自社サイトに転載
16 ☆☆ 有り  ☆☆  無し  大企業が意図的に偽の企業情報を発表したのをネットニュースが流す ▲▲
17 ☆☆ 有り  ☆☆☆  有り   
18 ☆☆ 有り  ☆☆☆  無し  大企業が意図的に偽の企業情報を発表し、テレビニュースで流す ▲▲▲
19 ☆☆ 無し  ☆  有り  雑誌の情報が誤りであることを知っていてつぶやく  
20 ☆☆ 無し  ☆  無し  雑誌の情報が誤りであることを知らずにつぶやく  
21 ☆☆ 無し ☆☆ 有り ネット百科事典の誤った情報を知っていてまとめサイトに転載 ▲ 
22 ☆☆ 無し ☆☆ 無し ネット百科事典の誤った情報を知らずにまとめサイトに転載 ▲▲
23 ☆☆ 無し ☆☆☆ 有り    
24 ☆☆ 無し ☆☆☆ 無し ネットニュースで流れた誤った情報を知らずにテレビニューズで流す ▲▲▲
25 ☆☆☆ 有り  ☆  有り  政府の嘘のつぶやきを支持者がわざとリツィート  
26 ☆☆☆ 有り  ☆  無し  政府の嘘のつぶやきを支持者が知らずにリツィート  
27 ☆☆☆  有り  ☆☆  有り  政府の嘘のつぶやきを政府側のネットニュースが流す
28 ☆☆☆ 有り  ☆☆  無し  政府の嘘のつぶやきを知らずにネットニューズが流す ▲▲ 
29 ☆☆☆ 有り  ☆☆☆  有り     
30 ☆☆☆ 有り  ☆☆☆  無し  政府の嘘のつぶやきを知らずにテレビニュースが流す ▲▲▲ 
31 ☆☆☆ 無し  ☆  有り  政府の勘違い発言を知っていてつぶやく  
32 ☆☆☆ 無し  ☆  無し  政府の勘違い発言を知らずにつぶやく  
33 ☆☆☆ 無し ☆☆ 有り 政府の勘違い発言をわざとネットニュースが伝える
34 ☆☆☆ 無し ☆☆ 無し 政府の勘違い発言を知らずにネットニュースが伝える ▲▲
35 ☆☆☆ 無し ☆☆☆ 有り    
36 ☆☆☆ 無し ☆☆☆ 無し 政府の勘違い発言を知らずにテレビニュースが伝える ▲▲▲


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(4)ニュースの鑑定

ニュースの鑑定とは

過去のフェイクニュースの例を具体的に挙げて、前節の表のどれに相当するかを考えてみましょう。
 これからは、書画・骨董・焼き物だけでなく、ニュースにも、鑑定士が必要になってきているのかも知れません。
 報道されたニュースは、本来、独立の機関が固有の番号を付して保存することも望まれます。
  フェイク度合いも肝心ですが、森友問題でも、明らかになったように、相当の時間が経過して、はじめて、その度合いが分かる場合があります。
 ニュースが報道されて、短期間のうちに、フェイク度合いを鑑定することは、一般には、なかなか、困難であることが予想されます。
 なお、当然ですが、対象となるニュースには、『予想』、『予報』、『予言』などは、含まれません。
 たとえば、『天気予報』、『競馬予想』や20世紀末に話題となった『ノストラダムスの大予言』などは、取り上げる必要はないでしょう。
  ただ、あいまいなニュースというのは、あります。
 これは、主として、媒体で舌足らずな表現等があり、正しく伝わらなかったというようなニュースです。
 テレビや新聞のニュースでは、時間や紙面の制約もありますので、ある程度は、やむを得ないとは思いますが、鑑定が必要です。
 ここでは、例を2つ挙げるだけに留めます。

 ・ コンピューターで全漢字使用可に 6万字コード化 (NHKニュース:2017/12/24)
  このニュースを聞いた時、驚きましたが、下記のサイトに詳しくまとめられていました。
  どうも、報道された表現や内容が本来のものとかなりずれていたようです。
  https://qiita.com/yumetodo/items/91e5169bff5ea4a813de、

 ・ クロームで閲覧の際、非HTTPS サイトで警告が表示される (多くのネットニュース 2018年春以降)
  本サイトも7月にサイトの全HTTPS化を行いました。
  きっかけは、グーグルのブラウザ『Chrome』で閲覧した際、バージョン68では、警告が表示されるという記事が散見されたからです。
  
  上の図は、上段が非HTTPS化のサイト、下段がHTTPS化されたサイトの例。(2018/9/11現在)
  しかし、スマホやタブレットをお持ちの方は、気がつかれていると思いますが、これは、パソコン版のクロームについての話です。
  Android や iOS 上のクロームの話では、ありません。
  たとえば、Android版のクロームでは、丸の中に i のアイコンは、http 及び https のどちらでも表示されますが、『保護・・』は、表示されません。
  このあたり(分かる人は分かっていたのでしょうが)、いくつかのネットニュースでは、不明確のように感じました。
  そのことを明確に指摘してくれているのは、下記のサイトです。
  『海外SEOブログ』 Kenichi Suzuki 氏。
  https://www.suzukikenichi.com/blog/chrome-on-android-warns-against-non-https-as-well-but-very-few-would-notice-it/、
  
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iPS心筋を移植 (フェイクニュース例1)

「2012年10月11日の木曜日の読売新聞の朝刊の見出しじゃな。
 1面トップ記事として、「iPS心筋を移植」という大見出しがあったからじゃ。米国ハーバード大のM講師らが実施という記事だった。
 

 同日の夕刊でも『死の間際 iPSしかなかった』という見出しで、感動的な記事が掲載された。
 

 ところが、2012年10月13日の朝刊で、「iPS細胞移植は虚偽」として同紙自らが否定した。
 

 この間の経緯は、10月26日の朝刊記事の中で、総括され、さらに、今回の誤報を除いても、過去に同紙が掲載したM氏の業績に関する6本の記事中5本が虚偽の内容と判定され、誤報となった。
 
 すでに、M特任講師に対するT大の処分の発表があり、また、新聞社内の関係者の処分も終わっている。
 ともちゃん、このフェイクニュースは、前節の表では、どの番号にあたるものかの?」

「2012年11月の今月のご挨拶『無意識的サギと意識的サギ』で取り上げたニュースね。
 すでに、約6年前の事件なんだけど、
 発信者の信頼度=☆☆、
 発信者の嘘の意図=有り、
 媒体の信頼度=☆☆☆、
 媒体の嘘の意図=無し、
 となり、表の18番に相当する。

「そうだな。
 フェイクニュースの典型的なタイプじゃった。
 読売新聞の報道を受けて、共同通信も取り上げたことにより、一時は、大ニュースとなって、日本中を駆け巡った。
 ただ、フェイクであることが短期間で分かったのは、マサチューセッツ州総合病院で該当する手術が行われていないなど、明らかに事実と異なることが判明したためだ。
 逆に言えば、新聞社が、もう少し、裏付け取材をすれば、誤報にならずにすんだのが残念じゃった。
 詳細は、前記の今月のご挨拶などを読んでいただきたい」
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STAP細胞 (フェイクニュース例2)

「誤報で思い出すのは、理化学研究所の研究ユニットリーダーであったO氏のSTAP(スタップ)細胞騒動ね。
 理研の記者会見は、2014年1月のことだった」

「英語名のstimulus-triggered acquisition of pluripotency 刺激惹起性多能性獲得 (ウィキペディア)
 当初の発表では、万能細胞を作る手段として、ES細胞、iPS細胞に次ぐ新しい手法という紹介であった。
 さらに、前節のような新聞の単独取材ではなくて、理化学研究所の発表をNHKをはじめとする多くのメディアが取材する形式だった。
 前節の記憶が残っている中での、一流研究機関である理研が発表したので、今度こそ本物だと感動した記憶がある。 
 ところが、世界中で検証が行われたものの、成功例がなく、理研内での再検証でも、成功することがなかった。
 結果として、Nature に投稿された研究グループの論文は、撤回された。
 理研の最終報告では、STAP細胞の万能性は、ES細胞の混入の結果とみなされた。
 ただ、なぜ混入したのか、それがO氏の故意なのか偶然なのかなど、依然として、推測の余地が残った」

「O氏の指導者だった理研発生・再生科学総合研究センターのS副センター長が自殺されたり、O氏の学位論文が取り消されたりと、後味の悪い事件になったわね。
 一方、STAP細胞のニュース自体は、フェイクニュースだったことになる。
 ただ、理化学研究所が発信者だとすれば、嘘のニュースを発信する意図は、なかったでしょうから、
 発信者の信頼度=☆☆☆、
 発信者の嘘の意図=無し、
 媒体の信頼度=☆☆☆、
 媒体の嘘の意図=無し、
 の36番となる」

「なるほどな。
 二重、三重に残念な事件であった」
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旧石器捏造事件 (フェイクニュース例3)

「これは、一つのフェイクニュースではなく、特定の人物による一連のねつ造事件であった。
 ウィキペディアの『旧石器捏造事件』によれば、
 『日本の前期・中期旧石器時代の遺物や遺跡だとされていたものが、発掘調査に携わっていた考古学研究家の藤村新一自ら事前に埋設した石器を自ら掘り出して発見したとする捏造だったと発覚した事件である。藤村は1970年代半ばから各地の遺跡で捏造による「旧石器発見」を続けていたが、石器を事前に埋めている姿を2000年11月5日の毎日新聞朝刊にスクープされ、不正が発覚した。これにより日本の旧石器時代研究に疑義が生じ、中学校・高等学校の歴史教科書はもとより大学入試にも影響が及んだ日本考古学界最大の醜聞となり、海外でも報じられた。
火山灰層の年代にのみ頼りがちであったことなど、旧石器研究の科学的手法による検証の未熟さが露呈された事件であった。縄文時代以降では、明確な遺構が地下を掘削して造られており、土の性格から直ちに真偽が判断可能なため、捏造は不可能である。

 この事件のように研究者自身が不正を行ってしまうと、案外、見破られにくいものになる」

「これは、大事件だったんだわね。
 初期では、氏が在野の研究者であったことを考えると、
 発信者の信頼度=☆、
 発信者の嘘の意図=有り、
 媒体の信頼度=☆☆、または、☆☆☆、
 媒体の嘘の意図=無し、
 の4番または6番、
 氏がその名を知られるようになった後期では、
 発信者の信頼度=☆☆、
 発信者の嘘の意図=有り、
 媒体の信頼度=☆☆☆、
 媒体の嘘の意図=無し、
 の18番でしょう」

「いつも、氏が旧石器を発見するのは、おかしいと感じて(※)、スクープをものにした毎日新聞のお手柄であった。
 取材するメディアは、常に批判的な立場で取材しないと、発信者側に偽のニュースを発信する意図がある場合は、うまく利用されてしまう」
※ 下記の『アナザーストーリーズ』を9/15に視聴したところ、毎日新聞社宛に匿名のメールがあり、記者達も、当初、半信半疑ながら、プロジェクトチームを立ち上げたとのことでした。

2020/9/15放送のNHK BSプレミアム『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』において、『偽りの“神の手” 旧石器発掘ねつ造事件』が取り上げられました。本節に書きましたように、2000年11月に毎日新聞により、スクープされたこの事件について、20年経過した今、この事件が何であったのかを、記者、考古学者、当時、前期旧石器発掘のニュースに沸いた遺跡の町の人々、の3つの視点から振り返りました。
https://www.nhk.jp/p/anotherstories/ts/VWRZ1WWNYP/episode/te/76M3YQXL81/
青字部分:2020/9/16追記

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火星に運河を発見 (フェイクニュース例4)

「わしが子供の頃は、火星には、運河のようなものがあるという説があって、かなり有力じゃった」
 ※ 以下の多くで『思い違いの科学史』(朝日新聞社:1978年第1刷:中山 茂 他)を参考にしました。


「えーと、
 おじぃさんは、明治のお生まれでしたっけ?」

「おいおい、それは、あんまりじゃ。
 『気象天文の図鑑』(小学館:1956年6月初版、1957年第4版)、の当時じゃ。
 
 この図鑑でも触れられているが、天体望遠鏡で火星を観測して、線条模様があると言い出したのは、スキアパレリ(1835~1910年) というイタリアの天文学者だ。
 彼は、火星が地球に接近した1877年(明治10年)に線条模様を観測した。
 すでに視力の衰えていたスキアパレリのスケッチは、判然とはしないものの、表面に濃淡の異なる線と面のようなものが描かれている。
 この発見は、フランス人のフラマリオン(1842年~1925年)により、彼の著した『天文解説書』に記された。
 フラマリオンは、イタリア語の『線条』(カナリ)を英語の『運河』(カナル)と訳した。これは、歴史上、有名な誤訳とされているそうだ。
 アメリカの民間天文学者 パーシバル・ローウェル(1855年~1916年)は、フラマリオンの天文解説書を読んで、火星に『運河』があると期待して、観測を準備した。
 その結果、線条のものを観測し、天文解説書にあるスキアパレリの言った運河と考えたのじゃ」

「写真技術は、まだ、なかったのかしら?」

「おっと、ともちゃん。
 よい質問じゃ。
 大気の揺らぎがあるため、地上からは、鮮明な写真が撮れなかったのじゃ。
 仮に細いすじがあるとしても、望遠鏡の分解能を超えてしまう。
 肉眼で観測した結果を手で書き留めるしかなかったようだ。
 その結果、すじがあると思って観察した人には、ぼんやり見え、ないと思って観察した人には、見えないという結果になった」

「おじぃさんが子供の時の図鑑を見せてもらったよ。
 『気象天文の図鑑』(小学館:1956年6月初版、1957年第4版)
 火星のページは、見開き2ページで、『生命のいるただ一つの惑星』という副題がついている。

 副題だけでも、すごいインパクト!
 たしかに、運河のような模様が描かれているわね」

「1779年のハーシェルのスケッチや1877年のスキアパレリのスケッチも載っている。
 運河説のローウェルも、観測では、運河と断定は、できなかった。
 何か、筋状のものがあるようには見えたが、それ以上の推測は、論文には書けなかった。
 しかし、彼の天体観測の熱意は、火星の運河に触発されてはじまったので、自分の推理を説明したかったのだろう。
 このため、ローウェルは、一般向けの本 『火星』(1895年:明治28年)を世に出した。
 その中で、彼は、想像力を駆使して、火星表面の季節による濃淡を植物の繁茂であるとすれば、筋状のものが運河ではないかと考えた。
 さらに、植物の中には、人工の農地もあるだろうし、農地があれば、町や村もあり、知性のある生物が住んでいるのではないかと推理を発展させた」

「すこし、推理の飛躍が大きいとは、思うけど」

「たしかに、現代の人から見れば、そうかも知れない。
 昔は、火星の方が地球よりも小さいので、早く冷えて、生命が住めるようになったのではないか、と考えられていたようだ。
 また、火星の季節により、変化する濃淡模様は、確かにあり、これも、水の影響と信じられていたことも影響した。
 早くに生命が誕生すれば、地球人よりも、知能や技術が発達していても不思議ではないからな」

「それが、いわゆる、火星人というわけね。
 ローウェルの『火星』にヒントを得て、H. G.ウェルズが空想科学小説『宇宙戦争』を3年後の1898年(明治31年)に発表した。
 ウェルズの小説の方がローウェルの本よりも面白かったので、世間に浸透したのね。
 その後、映画俳優・監督である オースン・ウェルズがラジオドラマとして、『宇宙戦争』を脚色して放送したのが、1938年(昭和13年)だった。
 放送時、ニュージャージー州のある町では、火星人が攻めてきたと一時パニックが起きたそうね。
 これで火星人が一躍有名になったという話よ」
 ※ 『流言のメディア史』(2019/5/12付けの読売新聞朝刊の書評)によれば、
 『そもそも、パニックが起きたという新聞記事の多くが不確かだという』ことが分かっているという。(2019/5/13 追記)

「今は、天体観測衛星などを使って、火星に接近して、観測が行われているので、運河や線条はないことは、はっきりしている。
 しかし、水は、極にはあるようなので、生命の可能性もないとは言えないが、かつての火星人のようなものは、いそうもないのは、安心だな」

「ところで、フェイクニュースに話を戻すと、火星に運河を発見、というフェイクニュースは、
 ローウェルの『火星』から、一般に広まったとすれば、
 発信者の信頼度=☆☆、
 発信者の嘘の意図=無し、(ただし、事実とは違ったけれどもね)
 媒体の信頼度=☆☆、
 媒体の嘘の意図=無し、
 の21番かしら」
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森友問題 財務省公文書改ざん事件 (フェイクニュース例5)

「これまでの4つの事例は、科学の話じゃった。
 森友問題は、多岐にわたるが、その中で、公文書の改ざんという事実をようやく財務省が認めたのは、2018年の春になってからだ。
 この事件は、財務省の佐川理財局長(当時)の虚偽の国会答弁に沿う内容に決済文書を書き換えてしまった事件だ。
 ここでは、細かい経緯は、省略しよう」

「この事件の発信者は、国会なのかしら、それとも、財務省なのかな。
 いずれにしても、
 発信者の信頼度=☆☆☆、
 発信者の嘘の意図=有り、
 媒体の信頼度=☆☆☆、
 媒体の嘘の意図=無し、
 の30番となるわね」
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(5)終わりにあたって

 今回もご覧いただきありがとうございました。
   2018年の夏は、台風及び北海道胆振地方を震源とする大きな地震がありました。
   ここに、あらためて、亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、被害に遭われた皆様に謹んでお見舞い申し上げます。
   次回も、本欄で元気にお会いできますことを願っています。
   ※旧ドメインは、2017/6/1で閉鎖いたしました。お気に入り、スタートページ等の変更をお願い申し上げます。
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 更新日 2018/9/11
一部文言を修正・補足 2018/9/12
一部追記 2018/9/14
画像を追加 2018/9/26
ワシントン・ポスト紙のファクトチェックの項に追記 2019/2/17
火星に運河を発見の節に『ラジオ放送中にパニック』を報じた新聞記事があやしいという内容を追記 2019/5/13
旧石器捏造事件がNHK BSプレミアム『アナザーストーリーズ』で放映されたことを追記:2020/9/16

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